つれづれAikoー 柴田愛子のブログ ー
第784回 渓谷に行きました

横浜市保土ケ谷にある「陣が下渓谷公園」に4,5歳児が行きました。賑やかな幹線道
路が通っている脇にあるのに、ほぼ自然状態が保存されたいいところでした。この場所は
卒業生の親が紹介してくれて、なんとこの日に保育に参加までしてくれました。
場所はいいけど、交通手段が不便。電車を乗り継いで、さらに徒歩30分くらい? 私
はチャッカリ車で現地へ。でも、駐車場からは心細くなるほど森林の中を歩きました。子
どもの声が聞こえてきたときは、なんとホッとしたことか。
渓谷という言葉に命がけ?と、脅えていたのですが、子どものふくらはぎくらいの水量
なので心配なし。石を集めてダムを作っている子、ボチャンと入りたいから、石をどけて
深くしている子、ずっと下を向いてきれいな石を探している子、周囲の森の生き物が気に
なって仕方のない子、みんないろいろです。
私は我が身だけで精一杯。足を水につけて涼を楽しむ。だって、やたらに歩いて滑って
骨折なんてなったら一大事です。「私は保育者としての役にはたたない」と心に決めてし
まうことにしました。すると、なんと視野が広がる気がしました。
水の中で表情もなく立ち続けている子がいます。おもしろいことが見つからないのかし
ら?仲良しとはぐれた?今日はエンジン掛からない? ここで私が声をかけたほうがいい
のかしら? それはサービス過剰? お節介? 悩みます。折角来たのだから「楽しかっ
た」と帰らせたいなんて気持ちも無きにしも非ず。でも「まあ、いいか」とほっておくこ
とにしました。子どもはきっと自ら心を立ち上がらせるときがくると信じて。
お昼は川から上がった近くの森の空間。木で作られたテーブルと椅子のベンチがあった
ので、何人かの子と座りました。隣の子がご飯を何粒か落としました。すると、アリが食
べに来ました。その横の子がおにぎりの具の立派なシャケを落としてしまいました。アリ
はきません。前に座っている子が食べている蒸しパンを小さくちぎりました。ふわふわの
ところと、周りのこおばしそうなところ、と普通のところの三種類をシャケの隣に置きま
した。興味津々で見ていましたが変化が無いので、とりあえず自分たちのお昼を続けます
。ふと気がつくと、なんとアリが来ました!来ました! 黒山のアリだらけになったのは
どれだと思いますか?
なんと、シャケだったのです。みんなでエ?!意外でした。この暑さでアリも塩分不足
だったのかしらなんて、思ったりして・・・。
この話をおとな達にして、なににアリがたかったかを聞くと、ほとんどの人が甘いパン
とお答えになります。数日後、山梨北杜市の「ぐうたら村」でセミナーがあり、自然な暮
らしをし、森の案内人でもある小西貴士さんに聞きいてみました。すると、「シャケ」と
即答。「どうしてわかるの?」と聞くと「動物質だから。アリは虫とか生き物食べるでし
ょう」。そういえば、その日も地面でハチの死骸をアリが運んでいました。もう、目から
鱗というか、どれだけ自分が通説や常識を疑いもなく信じ込んでいるか情けなく思いまし
た。
渓谷にいたとき私が一番はまったのはこのアリでした。折角、川遊びに行ったのにね。
そんなもんです。(2025.7.11記)
